遺体 明日への十日間

「遺体は話しかけられると人としての尊厳を取り戻す。」

劇中、元葬儀社員の主人公が市の職員に教えた言葉。
このセリフが半ドキュメンタリーである、この映画の全てを表している。

公けの場で初めて明らかにするが、私は震災直後の翌月から年末まで毎月、亡くなられた被災者全員分の慰霊祭を執り行わせていただいた。

今までの神職経験の中で一番しんどい作業だった。

自分が言い出しっぺだったか、誰かに言われてやり始めたのかどうかさえ覚えていないのだが、途方もない数の被災者を弔う目的で祝詞を奏上するという行為に絶対的な確信があるか?と言えばそうではなかった。

己の中で何度、自問自答や葛藤したかわからない。
御遺体を目前にしているわけではないし、御遺族から依頼があったわけでもない。
もう一ヶ月続けよう、もう一ヶ月続けよう。そんな思いを積み重ねながら続けた。
毎月毎月、いや毎日毎日が闘いだった。年末に、もういいだろう、と区切りをつけ終えた。
果たして正しかったのかどうかさえわからないまま。

しかし、冒頭にあげた主人公のセリフで何かが報われたような気がした。
この映画のスタッフ全員に、この場を借りて御礼を言いたい。
有難う御座いました。

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